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Vol.1(日本語版) アメリカのヘルスケアの現状

更新日:2022年4月11日


アメリカのテキサス州にヒューストンという都市がある。そこにはTMSという先進的な病院があることから、世界で一番先進的なメディカルシティと呼ばれている。TMSでは、心臓が一般の人の心臓の半分の大きさほどしかない子供に、人工的に作られた心臓を付け足すことで余命を長くする、などという発展的な手術が行われている。一方で、ヒューストンには低所得者が多く住んでいる町がある。その町の住民のほとんどは黒人であり、保険に入るためのお金がないため、病院にほとんど行けず、健康な状態を保てているとは言えない状況である。また、彼らの寿命はヒューストンの中の他の地域と比べて20年も短いのである。この同じ地域の中での激しい格差が生まれてしまうことがアメリカのヘルスケアシステムの問題点である。


「世界で最も高くて使えないシステム」、このようにアメリカのヘルスケアのシステムは呼ばれている。現在のアメリカでは、医療費の原資に政府と民間保険者の保険料の2つを用いる「複数提供者システム」を取り入れている。国はヘルスケアに毎年3.8兆円も費やしており、その額は日本、ドイツ、フランス、中国、イギリス、イタリア、ブラジル、スペインそしてオーストラリアでヘルスケアの分野で使われている費用を合わせた額に相当する。しかし、年間の死亡率は今あげたどの国よりも高いという結果になっている。

アメリカでは人口の12%もの人が健康保険に加入しておらず、加入者も含めても3分の1もの人が、医療費の高さが原因で病院に行きたくても行けない状況である。


政府から提供される保険についての専門家であり、大学の教授であるアシャさんは、現在のアメリカの制度を批判している。アシャさんは先進的な病院にお金を費やすより、全アメリカ国民が平等で、質の高い保険制度を提供するためにお金を費やすことが理想であると話している。


ここでヒューストンに住む貧しい黒人の女の人についての話をしたい。彼女は一般の保険会社に勤めており、お給料は時給1300円ほどである。このような低賃金では生活することが最優先であり、保険に入る余裕など全くない。ある日、定期検診に行った際、胸部にがんが見つかった。がんを取り除くためには腕につながっているリンパを取り除く手術が必要になる。アメリカでは手術法や薬を変え、個人の賃金によって保険料が変動する、変動料金制度を導入しているのだが、健康保険に入っていない彼女にとってはとても負担が大きかった。彼女には自分自身のアパートを売ることしか方法しかなく、泣く泣く家を売り払い、ホームレスとして暮らしていくこととなった。もし健康保険に入ることができていたならば、より早く、簡単にがんを見つけることができ、また家を売ることもなかっただろうと、彼女は述べていたそうだ。


人工の心臓をつけることができる技術を持っている病院がある一方で、保険に入れず家を失う人々がいる町が同じ地域にある、この格差をアメリカは解決する必要がある。しかしアメリカには、保険に自分の力で入ることができる人にのみ良い治療が与えられ、できない人には治療を受けることができない、という事実に対し、自己責任なので仕方のないことだという意見を持つ人が多い。アジアやヨーロッパで使用されている、全国民に平等な治療を与える制度を導入するのはなかなか困難なことなのかもしれない。


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